『平成三十年具注暦』の中で二項、誤記が見つかりました。
誤記の所在
誤記1、具注暦の巻頭に記述されているする暦序の「歳次」の項目です。正誤は、
誤「歳次鶉火」
正「歳次降婁」
誤記2、同じく暦序の歳徳の項目
誤「歳徳東宮戌」
正「歳徳南宮丙」
となります。
歳次とは
誤記のあった歳次とは「歳星紀年法」という古代中国で作られた紀年法の一種で、干支紀年法と似たようなものです。干支紀年法では「甲子、乙丑
、丙寅、丁卯〰」の六十干支を順繰りに年に当て嵌めていきますが、歳星紀年法では「玄枵 星紀 析木 大火 壽星 鶉尾 鶉火 鶉首 實沈 大梁 降婁 娵訾」の十二次を循環させています。歳星紀年法の理念は「木星の方向で年を表すこと」でした。すなわち「玄枵 星紀〰」はその年に木星が位置する方向を表す方位のことなのです。また、歳次の方向には福があるのでその方向の国を攻めてはならないという迷信も中国では生み出されました。
誤記の経緯
これ以降は言い訳になってしまうのですが、このような誤記が起こった理由を説明します。当初私は歳星紀年法の成立当初の方法、つまり木星が位置する方向を天文学的な正確な数値を元に十二次を当てはめようと考え、プラネタリウムソフトなどを利用し算定しました。それによって求まったのが「歳次鶉火」という記述です。
しかし、日本の具注暦では「木星の方向をたいして考えていな」かったのです。日本に伝わった頃には歳星紀年法は形骸化し、実際の木星の所在方向は気にせず、年の十二支との対照によって求めるようになり→「子:玄枵 丑:星紀 寅:析木 卯:大火 辰:壽星 巳:鶉尾 午:鶉火 未:鶉首 申:實沈 酉:大梁 戌:降婁 亥:娵訾」という対照方法が確立されました。なので日本の具注暦を再現する以上、この方法で対照しなければならなかったのです。
当然私は「歳次降婁」に直したのですが、原稿のバージョン管理のミスで「歳次鶉火」のまま浄書してしまいました。確認を怠らなければこのようにはならなかったはずです。申し訳ないです。
今後の対応
本来なら在庫分をすべて修正したいところではあります。が、巻装をすべて手作業で行っているため、一巻作るのに本当に時間がかかります。ですので心苦しいところではありますが修正はできません。下巻以降このような失態は無いようにいたしますので、ご理解、御容赦を願います。
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